評判上々の「碁盤斬り」!これは一年に一度、日本アカデミー賞を酒のつまみに見るのが大好き、かつ見応えのある殺陣シーン大好きな時代劇ファンとしては最近ノミネートのない時代劇(そもそも費用もかかるし万人受けではないからあまり作られない)が久々にノミネートされるんじゃないかと期待しちゃっていいのか!?って心躍りながら観に行ったよ!しかも主演は草彅剛!「ミッドナイトスワン」以来の主演男優賞なるか!って見る前からワクワク〜
草彅剛映画あるあるなんだけど、年齢層が高いからかシリアスな内容が多いからか食べたり飲んだりしながら見る方がいない。前に劇場で売られてるものを食べてただけなのに(できるだけ静かに。しかも静かなシーンでは遠慮した)、めっちゃ気まずかった思い出があるので今回は何も購入せず着席。案の定周りの方誰も飲食せず。買わなくて正解だったのでご報告。
では、ここからは内容に触れてますのでこれから映画を観る方はお戻りくださいませ!
さて、映画はというと走れメロスみたいな話でした!期限を切られた大晦日に向けて主人公が走るお話。
冒頭の街の感じはワクワクしたし、終始画像がこれぞ時代劇って感じで良かったし(格之進と柴田兵庫の碁の時間経過を伝えるシーンでのカキワリの夕富士?はやり過ぎだけど)めっちゃ悪い人が出てこないのも良しっちゃ良し。格之進の娘お絹がとにかく可愛くて、こりゃ清原果耶ちゃんまた最優秀助演女優賞とるかも!?と最初は思った、思ったけどさ〜
なんだかそれぞれのキャラが安定しない。というか脚本?編集?の問題?
主人公柳田格之進はさ、真面目で硬くて、そこが良くも悪くも人に好かれ疎まれるところだと思うんだけどさ、その表裏一体の怖さと切なさをもう少し丁寧に描けてたらなぁと。柴田兵庫を追う旅の途中で酒を飲みなから梶木左門に自分がやってきたことで路頭に迷ってる人がいないか感情を露わにするシーンがあるけど、固有名詞が出てきたりして最初誰のこと言ってる??ってなったし、柴田との因縁を振り返る過去のシーンがあったからそこで格之進の真面目さ故の告発から職を解かれることになる人たちとのエピーソードも入れれば良かったんじゃないかなぁって思ったり。
復讐の相手柴田兵庫に関しては斎藤工さんが演じたことで分かりづらくなったかんじ。今やってるドラマ「Believe」みたいな連続ドラマのミステリー要素として最後まで味方か敵かわからない役なら絶妙だと思うけど(ドラマ自体は残念な感じだけど)、この映画に関しては黒か白かはっきりしてほしかったなぁ。どう考えても行動は悪人なのに斎藤工から出る言葉が全て嘘とは思えず、もんやりしちゃうのさ。この映画において柴田兵庫はクソ中のクソで良かったと思うんだ。
で、大問題が中川大志くん演じる弥吉。せっかくお絹と少しずつ心を通わせるシーンもあったのに(ほんというともうちょっとあると良かったね。そしたら後の展開が映える)、あれだけ格之進と関わってるのに、番頭さんが格之進を疑ったら信じちゃうなんてある?しかも格之進にベタ惚れの旦那様に意見も聞かず勝手に話に行っちゃうなんて。結局格之進のことお金が出てくるまで疑ってたし、惚れたお絹ちゃんが遊郭に売られてるってわかっても旦那様に自分の非を伝えられずにいたしさ〜。ヒロインの相手役としては欠落しまくってると思うわけ。もう少し心の葛藤とか掛け違い的な展開欲しかったよねえ。弥吉とお絹の結婚が残念って思っちゃうのは映画の最後としてはもったいない。
細かいとこだけど、小泉今日子さん演じるお庚(小泉今日子さんが役に合わないとかってレビューもちょこちょこ見たけど個人的には合ってたと思う。っていうか上手かったよ)、大晦日に間に合わず翌日やって来た格之進に期限をすっとぼけるところもどうかなぁ。せっかく途中で足抜けしようとした遊女への厳しい態度でおかみとしての顔を見せたのに、役がぐらついちゃうよ。人として好きなお絹に対する姿と正式ではないにしろ働き手として遊郭に入ったお絹に対してではしっかり態度に線を引かないと。朝一番に徳兵衛が裏で利子分払ってるって設定とか欲しかったなぁ。それでお庚が格之進に「一晩遅れた分の利子は徳兵衛さんから十分な金額をいただきましたから」とかってニヤリと笑ったら拍手喝采だったのに。じゃなきゃ周りも納得しないでしょ。おかみがお絹だけにあんな甘いことして帰したら、雇われてる男衆や女郎たちがあんな微笑ましいものみた感じにならないって。
期待値が高かっただけに辛口になっちゃったけど映画館で見て良かったと思える作品ではあったのさ。ただ、「ミッドナイトスワン」のように完璧ではなかったってこと。傑作映画は観ながらこうだったらいいのに!?とか思わずその世界に没入してしまうものだからな。合戦とかの大立ち回りものじゃない(相手一人の仇討ちだから派手な立ち回りになりづらい)だけに、もうちょっと登場人物の心情とかを丁寧に描いてほしかったな。
って書いてる側から白石監督の次回作も時代劇だと!?「十一人の賊軍」。舞台は戊辰戦争。山田孝之と仲野太賀のW主演って派手さも相まって11月公開ということは次の日本アカデミー賞はこっちが本命では!?できれば二作品ともノミネートされてふくふく顔の白石監督が見たいものです!