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なんて美しい最終巻 漫画「ナナマルサンバツ」を読み終えて

ナナマルサンバツ杉基イクラ著/「ヤングエース」連載作品/角川コミックス/最終巻(20巻)発行2020年11月)

 

最終巻すげー!!!!ってなったのは「うしおととら」以来かもしれない(「うしおととら」は、あんなにでっかく広げた風呂敷を見事にたたんだことにそりゃ驚いたさ)。

 

ネタバレにもなるんで、読んでないけどすげー!!!!っていうなら読もうって方はこの後見なくて全然大丈夫!

 

高校に入学したばかりの気弱で博識な少年がクイズを知って、先輩や友人、仲間たちから多くを学び成長していく物語を描いた「ナナマルサンバツ」は20巻で幕を閉じた。

素人の新入生が部活やスポーツに目覚め成長し、夏の大会に挑むまでの話は他の漫画でもよくある話。一年目から優勝するパターン、惜しくも敗退など結果は違えどそこまでの過程は素人がルールを覚え仲間と切磋琢磨し、先輩に導かれと見応えばかりであることが多い。「ナナマルサンバツ」では、一年目の夏の大会が終わった時点で最終巻の半分以上まで進んでいる。人気のある漫画なら、主人公が2年生になったら、とか新たなライバルとか、迷走して違う種目も混ぜちゃうとかいろいろ引き伸ばそうとする周りの圧力もあったと思うが、作者が着地点は最初から決めていたというように、ここからの展開がとにかく美しい。

 

クイズのおもしろを教えてくれた偉大な先輩文蔵後2年生笹島という拠り所をなくしたクイ研は、新入部員の獲得に奔走するが、そこでダラダラ物語を伸ばしたりしない。部活に昇格できるだけの2人が入り(ここでも笹島先輩が絡むのが面白い)、学祭でのクイズ大会を計画する。近隣の高校からクイ研勢が集まり、見事大成功!ここでは今まで出てきたクイズの仲間たちの近況も見られて、まさかの笹島先輩もやってきての、とにかく胸熱、ほっこり展開。(「ナナマルサンバツ」の素敵なところはクイズを愛する人たちがとても美しく描かれているところだと思う(ビジュアル含め)。根っからクイズが好きで、そして皆個性的。スポーツじゃなくてもめちゃんこ格好良い。戦い方や挑みかたはそれぞれの得手不得手、各学校のカラーもあって様々で、主人公だけでなく全キャラクターを丁寧に描いているから、エピソードごとにそれぞれに感情移入してしまう。セリフもいいし、細かい部分までとにかく良い!

 

そして、学祭後のわずか4ページで描いた翌年の夏の大会の風景。準決勝に集う面々は後ろ姿だけでも誰だかわかり感慨深い。笹島先輩が竜壱と組んで和装で出てくるのも最高だ。さらに虎は昨年の大会のリベンジを近い竜とは離れて母校からライバルとして準決勝の場へ。前年度の準決勝のメンバーが再び集っている姿も嬉しすぎる!

「2位通過、越山識を擁する~」とのアナウンスは文蔵高校の成長と越山識の成長を感じさせてくれる。

 

最後の識の顔がいいんだよなぁ。挑むことを楽しんでる顔。めっちゃ成長したなぁ。

さあ、ここからどんな戦いになるのか、ワクワクと暖かさに包まれたラストは秀逸!

 

光の中に飛び出したような爽快感と暖かさを感じたい人にはぜひ、手にとって最終巻まで読んでほしい!